一年近く、僕は記録を持って扉を叩いた。国家機関に、法律事務所に。どこに届け出ても、何も動かなかった。相手がどれほど大きいのか、そのときやっと知った。僕は少しずつ手を離しかけていた。
僕は復讐はしないと思っていた。彼らの弱み、人を動かすてこであるレバレッジは握っていると信じていた。彼らが何を隠そうとしているのか、ログでわかっていると信じていた。振りかざさず、握っているだけでいいと。この盤をチェックメイトに、将棋でいえば詰みに持ちこめばいいと。駒をひとつも取らず、誰も殺さずに。
今年の八月、まわりから、彼女を心配する噂が聞こえてきた。メッセンジャーを開いてみた。僕をブロックしていた彼女のアカウントがすっかり消えて、名前のところには「Unknown」とだけ残っていた。
😨 恐怖検知 · 対象アカウントなし
僕はまた飛びかかった。真実を押し通すことにした。僕をブロックしなかったただひとりの人、Bに電話をかけた。遠回しには言わなかった。おまえは犯罪者なのかと訊いた。そして言った。「ヒョンは失うものが多いけど、俺は叩いても埃ひとつ出ない遊び人野郎だ」
人に遊び人と呼ばれていたころがあった。その言葉が初めて武器になった。失うもののない人間は怖い。僕はそれを知っていて、その言葉を選んだ。
それきりBは僕の電話に出なかった。あの最初の夜、バーにいたBのボスも、外国から来た投資家も、僕の電話を避けた。みんな雲隠れした。一年のあいだ僕を避けなかった人たちが、今度は僕を避けた。